黄昏に香る音色 2
「ママ!里美おばさんの荷物がないの!」

香里奈の叫びに、

明日香は静かに頷き、

「やっぱり…出ていく気なのね?」

里美は肩をすくめた。

啓介は、和恵の手を取ると、

「お土産がある。二階で開けよう」

奥の階段へ連れて行く。


途中、香里奈の肩をポンと叩いた。

「パパ…」

啓介は頷いた。




「あたしが帰ってきたからといって…出ていく必要はないでしょ」

明日香の言葉に、

里美はため息をつき、

「音楽やめたんだって。どうして?」

里美は、明日香を見た。

「今は関係ないでしょ!」

「関係あるわ。あたしは、あんたが音楽をやって…世界中の、普段音楽が聴けない人々の為に、活動してるから…ここにいるのよ」

里美は、明日香を睨んだ。

「自分勝手に、音楽をやめて、多くの人を裏切るつもりのあんたの為に、店を守る気はないわ」

明日香は絶句した。

「じゃあね、明日香。この店にいて、恵子ママの教えを思い出すといいわ」

里美は手を上げると、扉に向かって歩き出す。

明日香とすれ違う里美。

「あんただって!音楽をやめたじゃない!」

明日香は叫んだ。

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