黄昏に香る音色 2
「いいんですか?先生」

乗り込んだ車には、志乃がいた。

「いいのよ。車をだしてちょうだい」

運転しているのは、大輔だった。

バックミラーに、香里奈の走ってくる姿が映る。

「早く!」

里美が叫んだ。

車は出発する。

「後悔しないんですね」

志乃は、前を向いたまま、里美に言った。

「するはずがないわ」

里美も振り向かない。

バックミラーに映る香里奈が、小さくなっていく。

志乃は振り返り、

香里奈を見た。

「そうですね…」

すぐに、前を向くと、

「結局…先生は、優しいから」

志乃は呟いた。

「優しいって…出ていくのにか?」

大輔は、ハンドルを握りながら、言った。

「それが…優しいのよ」

志乃は、もう見えなくなった…バックミラーをしばらく見つめていた。

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