黄昏に香る音色 2
「ねぇ〜軽音部は、どうなってるの?」

珍しく、早めに帰ってきたゆうに、

幸子が、キッチンで料理をしながらきいた。

「無理かもな」

テレビを見ながら、ゆうはこたえた。

教師とは、生徒のやる気で生きている。

どんなに遅くまで残るかじゃなくて、

遅くまで頑張る生徒がいるかだ。

勿論、生徒のやる気を導くのも、教師だ。

「どうして?音楽は、人気あるでしょ」

幸子は、料理をする手を止めて、

振り返った。

ゆうはため息をついて、

「最初から、あればな」

ゆうは立ち上げると、

出来上がった料理を取りにいく。

「なければ…わざわざ、つくろうとは思わない」

幸子は、出来上がった料理を、ゆうが用意した皿に盛る。

「そんなもの?」

幸子の言葉に、

ゆうは苦笑した。

「そんなものさ」

ゆうは、皿をテーブルに運ぶ。

「運命は…」

ゆうは言葉を一度切り、

「勝手に来るものじゃない。行動を起こした者だけにくる」

幸子は、魚を焼きながらも、

夫の言葉に耳を傾けていた。

「教師は…何もできないな…」

ゆうの嘆きに、

「そんなことないわ」

幸子は振り返り、笑顔を向けた。



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