黄昏に香る音色 2
ショッピング街と海の間に、長い階段があり、

香里奈と直樹は、一番下の…手摺りの手前の階段に、腰かけた。


「ちょっと待ってて」

直樹は立ち上がると、階段を駆けあがっていく。


香里奈は、海を見つめた。

遠くに工場の煙と、貨物船が見える。

あまり綺麗な海じゃないかもしれないが、

その先に、果てしなく続く海は、とても大きく、雄大だった。


「香里奈さんは…」

直樹は、ペットボトルのお茶を持って、戻ってきた。

香里奈は受け取ると、蓋を開けた。

直樹は隣に座り、

「どうして、今回のオーディションに、参加したんだっけ?」

香里奈は、海を見つめながら、

「里緒菜を助けようと…」

「でも、それは如月さんは、望んでなかったね」

「え?」

香里奈は、直樹の方を見た。

直樹も海を見つめながら、

「よかったかもしれない」

直樹は立ち上がり、

「そんな理由で、歌ったら駄目だよ」

手摺りまで、海のギリギリまで歩いていく。

「香里奈さんの歌は、そんな企画に合わないよ」

香里奈は、直樹の後ろ姿を見つめた。

「香里奈さんが、自分で歌いたいと思う時まで」

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