黄昏に香る音色 2
「ナオくん…」

海風が、2人に流れる。

空がやがて…夕焼けに、変わる。

「でも…志乃ちゃんとか、里美おばさんがいて…あたしを、落としたんだよ」

夕陽が、海を黄金色に染めていく。

「俺が、審査員だとしても…落とすよ」

直樹の体も、夕陽に照らされ、

輝いていた。

「ナオくん」

直樹は振り返り、

「俺だって、落とす。もし…落ちたことに、落ち込んでるんだったら…落ち込むな」

直樹は、真剣な表情で、香里奈を見続けた。


香里奈はぎゅっと、胸を抱き締めた。

「みんな…大切なんだよ。香里奈のことが…」

直樹は頭をかき、

「まったく…自分の凄さに全然、気づいてないんだから」

直樹はため息をつき、

「俺がしっかりしないとな」

直樹は前を向き、海を眺めた。




「夕陽って…好き」

そう呟くと、香里奈は直樹の隣に来て…手摺りにもたれた。




「ねぇ。そんなに…あたしの歌って…いいの?」

香里奈の問いかけに、直樹は頷いた。

「俺には、特別だ」

「ふぅ〜ん」

直樹は、夕陽に照らされる香里奈を見た。

「綺麗だ」

「え?」

思わず出た言葉に、反応されて、

直樹は慌てて、視線を外した。
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