黄昏に香る音色 2
「演劇部にも、朝練なんかあるんだ」

「発表会が近いからね」

里緒菜の言葉に、香里奈は感心したように、へえ~と頷いた。

用意を終え、里緒菜は香里奈の方を向いた。

「香里奈」

「何?」

里緒菜の視線が痛い。

「あんたも、何かやったら?もう2年だし…来年は、できないよ」

里緒菜の言葉に、香里奈は手を振り、

「興味なし!」

里緒菜は、少し呆れながら、

「小学校の時は、やってたのに…音楽とか…」

「音楽なんて、興味ない!」

香里奈は、きっぱりと言った。

「才能あるのに…」

残念そうに、呟く里緒菜。

「才能か…」

香里奈は、里緒菜から視線を外し、

窓から見える、グラウンドを見た。

才能…。

音楽の才能なんて…。



「そう言えば…香里奈のお母さん。もうすぐ帰ってくるんでしょ」

「まだ…いつかは、決まってないけど」

香里奈の母の名は、

速水明日香。

トランペッターにして、

歌手だ。
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