黄昏に香る音色 2
「じゃあ…」

ダブルケイの前まで、直樹は送り終わると、来た道を戻っていく。

「あ、あのお…」

香里奈の声に、直樹は振り返る。

香里奈は、きちんと姿勢を正すと、頭を下げた。

「送ってくれて、ありがとう」

直樹は目を丸くしたが、笑顔を向け、

「いいよ」


香里奈は、頭を上げると、言葉を続けた。

「まだ付き合うとか…わかんないんだけど…」

香里奈はもう一度、今度は深く、頭を下げた。

「よろしくお願いします」

直樹も直立不動になり、

「こちらこそ、よろしくお願いします」

頭を下げた。

2人とも、頭を下げたまま…やがて、

笑い合った。

これが付き合うかどうかの返事とは、違うかもしれないけど…

2人の始まりだった。
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