黄昏に香る音色 2
時祭
部活を終え、里緒菜は一人、駅までの道を歩いていた。

もう陽も沈み、暗くなっていた。

一台の黒い車が、里緒菜のそばを通る。

車はすぐに、前で止まった。

里緒菜は気にせずに、車を追い抜いていく。

「お嬢様!」

車から降りたお爺さんが、慌てて里緒菜を追いかける。

「お嬢様!」

里緒菜は足を止めず、前を向いたまま、

「学校には、来ないでと…言ったはずよ」

「し、承知しておりますが…このままでは、パーティーに間に合いませんもので…」

里緒菜は足を止め、

「今日のパーティーは出席する気はありません」

キッパリと言い切った。

しかし、

「今日は絶対、出席させろと、旦那様から言われております」

里緒菜は、歩き出す。


「お父様の会社と、敵対関係のある…時祭財団の会長が、来られることになりましたので…」

里緒菜は振り返った。

「時祭財団!?」


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