黄昏に香る音色 2
光太郎は、無理やりの笑顔を見せる。

「家に連れ戻されて…それから、昔と…同じ…生活をしてた…」

光太郎は、千春に近づく。

「おいしかった…料理も。何年も食べてなかったし…」

光太郎の声が、大きくなる。

「仕事も…大したこともできないジジイたちに、ごちゃごちゃ言われて!」

光太郎は、手を広げた。

「ここにいたら、誰も…俺に逆らえない」

光太郎の表情を見た瞬間、

千春はまた、背を向けた。

「心配しなくていい…お前たちの面倒も見るから…結婚できなくても、今よりいい生活ができる」

千春は話の途中で、光太郎の方を向き、頭を下げた。

「ごめんなさい…」

「え…?」

「今日でお別れします」

「何を言っている!今より幸せになれるんだぞ」

「ごめんなさい…」

「け、結婚はできないが…明日香は、認知してやるし…」

千春はもう辛かった。

今、そばにいるのは…千春の知らない人だ。

千春は泣いていた。

凛とした態度でいたかったが、涙は止まらなかった。

「千春?」

戸惑う光太郎。

「ごめんなさい…あたしは、あなたを…幸せにできなかった…」



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