黄昏に香る音色 2
グラスを傾けると、氷が踊った。

志乃は、ジンバックを一口飲み、

「そうですね」

マスターに、微笑みかけた。

マスターは照れたように、頭を下げ、

「出過ぎた真似をしまして、申し訳ありません」

また厨房の中に、消えていく。

志乃はまた、グラスを傾けた。

そして、直樹を見る。

「さっき知ってると言ったのは…あたしじゃなくて…」

志乃は、上を指差した。

思わず上を見る直樹。

志乃は、またクスッと笑うと、

「音楽のことよ」

直樹はああ…と納得する。

「これは…確か…」

かかってる曲は、知っていた。

志乃は、ジンバックを飲む。

「河野和美よ」

「あっ!知ってます。日本人で初めて、有名な賞を取った人と」

「ロンリネス・イズ・マイセルフ…有名な映画の主題歌になった曲。彼女は天才よ」

和美の歌に合わせて、志乃は軽くリズムに乗る。

「最初の受賞者は、河野和美。二番目は…」

またジンバックを飲み、

「速水明日香…。三番目が、あたしの予定」

志乃は言った後に、自分自身に笑った。

(大した、自信ね!)

(天城志乃!)

志乃は、ジンバックを飲み終わった。



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