黄昏に香る音色 2
「キミは…若いわね。高校生?」

志乃の問いに、

直樹は、はいと返事をする。

「未成年が…いいの?」

「普段は、もう上がっています。夜のバイトの人が、今日は遅れてまして… 交代制ですから…」

「大変ね…」

「いえ…逆に、もっと働きたいです」

マスターがまた、厨房から顔を出した。

「この子は一人暮らしで、生活費を、自分で稼いでるんですよ」

志乃は、思わず声を上げた。

「高校生なのに!大変」

直樹は照れくさそうに、

「そんなことはないです」

志乃は、ジンバックを飲み干すと、おかわりを頼む。

新しいグラスに、直樹は再びジンバックを作る。

「じゃあ、毎日大変ね。遊ぶ暇もないんじゃないの」

直樹は、ジンバックを志乃の前に出すと、

「大丈夫です。部活もやってますし…そ、それに…」

直樹は顔を赤らめる。

「それに…何?」

志乃が、身を乗り出す。

「何言ってんだか…」

直樹は一人呟くと、志乃の視線に気づき、

「な、何でもないです!」

慌てる直樹に、志乃はいたずらぽく微笑むと、

「彼女ね」

「か、か、彼女じゃないです」

さらに慌てる直樹が、可愛いかった。


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