黄昏に香る音色 2
志乃の目が一瞬鋭く、目の前を見据えた。

それは、ここではないところを見ていた。

「一曲…録音したけど、サンプリング代がかかるし、今回は、オリジナルばかりにしょうと、お蔵入りにしたやつあるでしょ」

志乃は歩き出す。

「マリーナ・へインズの曲から、サックスだけ抜き出したやつ…あれ、使うわ」

志乃は、クスッと笑った。

「曲名も決めたわ」

マリーナの曲は昔、啓介が参加した曲だった。

「ロンリネス・イズ・ユアセルフよ」

志乃は、携帯を切った。

これは戦線布告だった。

「楽しみだわ」

志乃はそう呟くと、歩くスピードを上げた。



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