天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
明菜に…その向こうの発電所に向けて放たれた光球は、

綾子の手を離れると、半径二メートル程のエネルギー体になった。

そして、光の速さで、すべてを破壊する…はずだった。

避けられる…いや、反応できる速さではない。明菜はただ…次元刀を振るうだけだった。

それでも、タイミイグは遅すぎた。

次元刀を上段に構えると、脳が腕に命じただけで、明菜は消滅した……はずだった。

放たれた光球は、瞬きの間に現れた人物によって、弾き返された。

綾子は目を見張り、放った後の右手を広げた。

返された光球は、綾子を直撃した。

それは、一秒にも満たない時。


「チッ」

綾子は舌打ちした。

光球を止めることは、できず…破裂した。

まるで、閃光弾のような輝きも、明菜の前に立つ大きな背中が、眩しさから守ってくれた。



「こうちゃん…」

五年ぶりに見た…浩一の背中。

姿は変わっていなかったけど…とても、大きく感じた。 

明菜の頬に、安堵と嬉しさの涙が、自然に流れた。


「明菜…」

浩一は、前を見たまま…明菜の方を向かずに言った。

「発電所の裏から逃げろ!そこには…美奈子さんがいる!」

「こうちゃん!」

すがりつこうとする明菜に、浩一は叫んだ。

「ここは、危険だ!」

明菜は、浩一の声の鋭さに、びくっと体を震わせた。

「ここからは…お前を守れない」

浩一は、言葉を噛み締めた。

光球が破裂して、起こった爆風と砂埃が止んでいく。

そして、その中から……赤き瞳に、漆黒の翼を広げた…綾子が、無傷で立っていた。


「赤星浩一」

血よりも赤い瞳…鋭い牙が、きゅと結んだ唇の両端から、覗かれていた。

綾子の…バンパイアとしての解放状態であった。



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