天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「ここは…」

意識を取り戻した時、僕は懐かしい空間にいた。


「教室?」

木造の机が、縦に五列並び…僕は、ちょうど真ん中にいた。

小学校か、中学校かはわからないが…普通の学校であったことは理解できた。

グランド側の窓から、眩しい光が飛び込んできた。

その赤い光に、目を細めると、

僕は黒板の上にある柱時計を見た。6時前だった。

(確か…僕が意識を失ったのは、昼過ぎのはずだ)


僕の脳裏に、バイラの言葉がよみがえる。

しかし、僕は頭を振って、その言葉をかき消した。

言われなくても、わかっていた。

(だけど…あの場合は、仕方ない…)

アルテミアを責めるよりも、また肝心な時に、助けられなかった…自分自身の腑甲斐なさに、僕は唇を噛み締めた。


椅子から立ち上がると、まだふらつく体で、僕はグランド側の窓に向かった。


そこから見える景色は、明らかに山奥だった。

「廃校か…」

少し草の生えたグランドに、夕陽に照らされても、くすんでいる校舎。

ふっと僕は、

グランドの真ん中に立つ人影に、目が行った。

数秒前まで、いなかったはずだ。

まるで、陽炎のように揺らめく…女の後ろ姿に、僕は見覚えがあった。


僕は、目の前の窓を開けると、そのまま助走もつけずに、ジャンプ力だけで、窓をくぐり…飛び降りると、グランドの手前に着地した。

そして、ゆっくりとその女の背中目指して、歩いていく。


「あなたなのか……僕をここまで連れてきたのは…」

女は、山と山の間に消えていく夕陽を眺めているようだった。

「何の目的です!」

僕は、何もこたえない背中を凝視した。


無言のままでいようとする女に、僕は名前を出すことにした。

「炎の騎士団長……リンネ」


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