天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「生命の…樽?」

空牙は、要件を伝えるとテレポートしたデティーテェがいた空間を睨みながら、その言葉を繰り返していた。

そんな空牙の横顔を心配そうに、見つめていたカイオウは、はっとして…頭を下げると、彼もまたテレポートした。


しばらく…虚空を睨んでいた空牙は、ゆっくりと手を前に突き出した。

すると、空間にノブのようなものが現れた。

空牙はノブを掴み、一気に引くと、そのまま扉の形に開いた空間に、飛び込んだ。




何もない草むらに、着地した空牙は、急いで周りを確認した。

「あれから…どれくらい経った…」

空を見上げても、戦闘機は飛んでいない。焼け野原だった世界は…人工の建物が立ち並んでいた。

前に来たときには、あり得ないほどの大きな煙突から、煙が吐き出されていた。

空牙はもう一度、空を見た。

「空が…黒い…?」



空牙は、右の手の平を下にかざし、軽く振った。

すると、空牙の服は…学生服へと変わった。

この国のいいところは、近代なら…この学生服というやつで、どこでも通用するということだった。あまりデザインも変わらないし…。

空牙にとっては、ありがたかった。

草むらを歩き、しっかりとアスファルトで舗装されている地面の感触を、確認した。

(土を殺して…作った道か…)

空牙は、アスファルトの道が嫌いだった。なぜなら、人間に都合がいいだけだからだ。

遠くの方から、車のクラクションの音が聞こえてきて…子供の笑い声も聞こえてきた。

(戦争は…終わったのか…)

空牙は、前に来た時の…国全体のピリピリした雰囲気が、なくなっていることに気付いた。

しかし、

空牙は、異様な建造物に目を奪われていた。


剥き出しの骨組みに…立ってるのが、おかしな建物。

そして、その周りに残る…異様な悪意の跡。


「そうか…」

空牙は、その建造物から目を逸らした。


< 1,047 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop