天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「しかし…この近くには、いないな…」

空牙は、人の目では捉えられない程の高速で動いていた。

空牙には、人が止まって見えた。

すれ違いながら、空牙は人の服装や…健康状態をチェックしていた。

若い女の首筋を、擦るように触れ…血を指先につけた。

空牙は、血を舐めた。血にはいろんな情報が、溢れていた。

明らかに、栄養状態もよくなっている。



空牙は、空に向かって、ジャンプした。

歩いていた中年の男は、いきなり目の前のアスファルトが破裂したことに、目を丸くした。



雲の下まで、一瞬で到達した空牙は、広がる島国の地形を観察した。

「おかしい…」

いつもなら、開けたところの近くに、目的のものはあるはずだった。

それが、見当たらない。




いや、空牙は気付かなかったのだ。

対象が移動していることに…。

「強い気は……数人感じるが……目覚めてないな…?」

空牙は、仕方なく…空中でしばらく…気を探ることにした。

「生命の樽…」

空牙の想像が、正しければ…すぐに見つかるはずだった。


しかし…見つからない。

「いぶりだすか?」

空牙の右手が、スパークした。電気が発生し、それを上空の曇にかざすと…すぐに雷雲ができ…雷鳴をあらゆる場所に、落とすことができる。 


雷を落とそうとした…空牙の脳裏に…ある1人の女が、よみがえった。

空牙と…本田と…その女…。笑い合う三人。

「くそ!」

空牙は、雷雲に送った電気をすべて…吸い取った。


「小百合…」

その女の名前は、覚えていた。

本田の婚約者だった。


「あれから……何年…たっている…」

空牙は、さらに高度を上げ…移動しながら、気を探ることにした。


町を破壊する気には、なれなかったのだ。

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