天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
今年で、中学を卒業する梓の就職に関しても、母親は考えていた。

いなかよりは、都会がいいと。


梓は、ため息をついた。

あと一年で、卒業なら…せめて、生まれた土地で過ごしたかった。

友達も、みんな…残してきた。


(あと…一年かあ……)

トンネルに入った電車の窓に、映る自分の顔を見つめた。

少し淋しそうだ。



そんな表情を映すトンネルは、すぐに終わり…梓の瞳に、見知らぬ風景が映る。

梓は、自分の席と反対側の窓を見た。

梓の生まれた町とつながっている海が、広がっている。

海の色は、いっしょだけど…向こうに見える島の風景が違った。

(この海も見えないところに…あたしは、行くんだ…)

梓は初めて…感傷に浸ってしまった。


梓はもう…風景を見るのをやめた。

真っ直ぐに視線を正した。

周りは変わっていく。

(…だけど、あたしは)

梓は、軽く下唇を噛んだ。

まだ目的地には、つかない。

梓は、時の流れのいうものを感じながら…ただ電車に揺られ続けた。


< 1,050 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop