天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「悟様…」


響子は、指の形を解いた。

そして、座席にもたれながら、天井を見た。



「お前の言いたいことは、わかっている……。我々がいるというのだろ?」

響子は首を上に向けながら、目だけで性眼を見た。

性眼は、また頭を下げた。

「我々は…人類の敵とは、判断されていない」

響子は、きっぱりと言い切った。そして、天井を睨んだ。

「なぜなら、我々を認知してしまうと、自分達の立場が悪くなるからな………!?」

響子ははっとして、電車の窓を開けた。

そして、顔を出すと、空を見た。

「気のせいか…」

空には、雲しかなかった。

響子は顔を引っ込め、窓を閉めた。

「一瞬…殺気を感じたのだが……やつらの…」

響子は、座席に座りなおすと、何気に額を拭った。

「!?」

汗をびっしょりとかいていた。


響子は、汗のついた手を見ながら、わなわなと震え出した。

「や、やはりいた…」

目を見開き、少し怯えているように見える響子の様子に気付いた性眼は、立ち上がった。

「待て!性眼!」

全身から、異様な気を発しだした性眼を、響子が制した。

「やつは、もういない」

響子は深呼吸すると、全身の緊張を取り去っていく。

「それに…気付いていたならば、こちらが攻撃を受けたはずだ」

冷静になった響子は、口元を緩めた。


「やつらは、対象をわかっていない!しかし」

響子は、気になっていた。

そいつが向かった方角は、響子が乗る電車と同じである。


(やつらの中にいる…予知能力者が気付いたか?)


響子は、下唇を噛み締めた。


「悟様…」

立ち上がりながら、指示を待つ性眼に、


「心配するな。やつらは、もうあの爆弾を使わない。一度に殺すより…武器を使った方が…儲かるからな」

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