天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「誰だ?貴様は?」

響子は、机の向こうにいる短髪の男を睨んだ。

心を読もうとしたが……肝心の心がなかった。

「クククク…」

男は含み笑いをしながら、かけていたサングラスを取った。

瞳が異様に充血し…血管が浮き出ている。

響子は眉を潜め、心ではなく…身体的特徴を探った。

すぐに、おかしなものに気付いた。

「貴様…従者かあ……バンパイアの…」

響子は腕を組み、目の前にいる男を睨んだ。

「ほお〜」

男は感心したように、腕を背中に回すと、机の向こうから出てきた。

響子を、充血した目で見つめながら、

「さすがは、八百万の神々の中でも、その中を轟かす…妖怪サトリ。我をバンパイアの従者と知っても、驚かないか?」

男は顔を、響子に近付けた。

響子は逃げなかったが、顔をしかめた。


「あんたの…ご主人様だったら、少しは警戒するけどさ…」

響子は少し顔を離し、

「今は、昼間。あんたのご主人様は…棺の中かい?」

響子は微笑みながら、嫌みぽく言った。

「…フン」

男は鼻を鳴らすと、響子から離れた。

また机を回ると、椅子に腰かけた。

「要件を言おう」

男は前屈みになり、机の上で腕を組んだ。

「君達の神を渡し給え。もうこの国には、必要ないはすだ」

男の言葉に、響子は何もこたえない。

「君達の国は負け…計画は、断念された。今…彼女を有効に利用できるのは…我々だけだ」


「フン!」

今度は、響子が鼻を鳴らした。そして、机に近づくと、右手を置き、

「それは…あんたらの国も同じはず!戦勝国も、敗戦国も疲弊したはずよ」


響子の言葉に、男は鼻で笑った。

「君は…我が、バンパイアの従者だと知って…ヨーロッパだと思い込んでしまった…」

男は肩をすくめ、

「認識力が、乏しすぎる…」

憐れむように、響子を見上げた。


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