天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「今…あらゆる権力が、一つの場所に、収益されている」

男の言葉に、響子はすぐに理解した。



「アメリカか…」


男は唇の端で笑い、今度は椅子にふんぞり返った。


「わかっただろ?君達…はわが国家の植民地だ。我々の命令に、逆らう権利はない」

「日本は、独立した!れっきとした国家よ!」

思わず声を荒げた響子に、男は笑った。

「ははははは!我が国の基地があり…この国の首都といわれるところにも、まだ駐屯兵がいる!こんな国が、独立国家か?」

男は立ち上がると、机の端に手を置いている響子に、顔を近付け、

「違う……違う!違う!断じて、独立国家ではなあい!」

声を荒げながらも、どこか嘲るような男の口調に、

響子の全身が、小刻みに震えてくる。

そんな響子を見下しながら、男はさらに言葉を続けた。

「そもそも…この国が、独立できたのも……この国が、我が国の!そして、資本主義の尖兵とする為だ!」



響子の顔は、真っ赤になっていた。

そんな響子が面白くて、たまらないらしい…。男は満面の笑みを浮かべ、

「それに……今この国に…神はいるのかね?シンボルである現人神は、力を失い…。君達…八百万の神々も、戦争で死んでいった」

男は楽しくて、仕方がない。

「今…お前達の仲間は、何人いる?新たな戦力をつくろうにも、資源と時間がない…。人から生まれ…覚醒する為には、最低十年はかかるだろう」


確かに、人ならざる力を持っている者で、まとにも戦える者は、思いつかなかった。


響子でさえ…戦闘には向いていなかった。

いや、日本の妖怪などは、あまり人を殺さない。ただ悪戯をして、人を脅かすだけだ。 

人を襲うのは、やまんばや鬼…つまり、もと人間だけだ。

「そんな国に、神はいらない」

男は、響子を充血した瞳で見つめた。



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