天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
梓の目の前に、梓よりも大きな鎌が、二本…渡り廊下のコンクリートに突き刺さっていた。

鎌の表面に、梓の全身が映る。

驚く梓の耳に…さらなる金切り声が、断末魔を奏でるのが、聞こえた。

輪廻の持ったネクタイは、毛玉に突き刺さっていた。

輪廻は、それをさらにねじ込み、一気に押し込んだ。

渡り廊下に突き刺さっていた鎌が抜け、

背中から輪廻を狙う。

しかし、また輪廻は消えた。

二本の鎌は、毛玉に突き刺さった。

それと同時に、輪廻の足が毛玉を踏みつけた。

「カマイタチか....この程度のやつでは、駄目だ」

輪廻が、足に力を込めると...毛玉は消滅した。


「おれが、望んでるのは…もっと強い敵だ…」


輪廻は顔を上げると、渡り廊下の向こうを睨んだ。

「…あんたのようにな…」

そして、十メートル程離れた南館の窓にもたれて、こちらを見ている空牙を睨んだ。

「え?」

訳が分からない梓を尻目に、輪廻は、空牙に向かって歩いていく。

空牙は軽く、肩をすくめた。

輪廻は対象を、空牙に変えた。

「あんたなら…おれの願いを叶えてくれそうだ」


「願い?」

空牙は、眉をひそめた。

「それは…!」

輪廻が両手を広げると…手のひらに、風が集まる。

そして、軽く渦をつくると、手のひらの上に、小さな竜巻ができた。

「あたしを!」

輪廻が、両手をクロスさせると、竜巻は消え、

空牙のもたれる窓ガラスが一斉に、割れた。

「カマイタチの……能力を盗んだか?」

空牙は、笑った。

まるで、散弾銃のように、空気の塊が、空牙のいる空間を切り裂いたはずだった。

しかし、空牙は無傷だ。

ただもたれていた窓ガラスがなくなった為、少し体を起こした。

「倒した相手の能力を、一定時間…使役できる。レア能力者か…しかし」

空牙は何事もなく、輪廻に向かって歩きだす。

その間も、輪廻は空気を投げ続ける。

渡り廊下への入口の両側の壁に、爪痕のような傷が無数に、できた。 

「俺には、単なる風だ」

空牙は涼しげに、微笑んだ。


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