天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「な、な、なななな…」

男は動こうとしたが、身動きが取れない。


「どうした?お前の技だろ?簡単に、解いてみせろよ」

男の真後ろに、無傷の空牙が立っていた。

「俺は、すぐに解いたぞ」

馬鹿にしたようにいう空牙の口調に、男はキレた。

「おのれ〜!」

すると、闇が消え、

空牙と男は、廊下に立っていた。

「純粋なるバンパイア…の始祖である…このドラキュラをを!馬鹿にしおって!」

「フン!」

空牙は、鼻で笑った。

「純粋なるだと?闇の中しか活動できない出来損ないが、吠えるな」

空牙の右手が、スパークする。ドラキュラの向けて、凍り付くような視線を浴びせながら…。

「ク!」

その視線に見つめられると、ドラキュラの背筋に戦慄が走った。


「待て!」

渡り廊下から、輪廻が走り込んでいた。

「チッ」

空牙は輪廻を見て、舌打ちした。

どこか焦ったような空牙の様子に、ドラキュラは口元を緩めた。

「やはり…こやつが、火の元の女神か」

ドラキュラは身を翻し、輪廻に向かおうとする。

輪廻は、一瞬で状況を理解すると、ネクタイをドラキュラに向けた。

「女神は貰う!これで、我は…」

ドラキュラは、最後まで話すことは、できなかった。

ドラキュラと輪廻の間に、テレポートした空牙は、右足の蹴りでドラキュラの首筋を蹴り上げ、

そして、気を込めた人差し指で、背中を向けたまま、突き出してくる輪廻のネクタイを止めた。



「ぎゃああああ!」

窓ガラスをぶち割って、太陽が出ている外に飛び出したドラキュラの全身から、煙が立ち上った。


「き、貴様は、何者だ?」

輪廻が力を込めても、指先一本でびくともしない。

「それは…こっちの台詞ですよ」

空牙は首だけを動かし、

「あなたこそ…何者ですか?」

輪廻を見た。

そして、絶句した。

空牙を睨む瞳が、すぐ近くあった。

その瞳の輝きを、空牙は知ってるような気がした。

とても、懐かしい思いを感じる。

(どこかであったか?)

しかし、空牙には記憶がなかった。

< 1,077 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop