天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「あたしを殺せないなら…お前は死ね!」

輪廻は、胸につけていた校章を取ると、それをクレアの額に向けて、投げた。

投げるとき、指先で回転を加えた校章は、クレアの額の上で、駒のように回り出す。

「ぎゃああ!」

クレアは慌てて、校章を叩き落とす。

その間に、梓を輪廻はキャッチした。

「天道さん!」

少し涙ぐんでいる梓に、輪廻は笑いかけると、

「やはり、お前といると…会ったな」

輪廻は九字を切り、人差し指と中指を立てた手剣で、

「臨兵闘者皆陣列在前!」

クレアの呪縛を切った。 

素早くクレアから離れ、梓を空牙達のそばに置くと、そのまま地面を蹴って、クレアに突進した。 

「貴様は!この世界の者ではないのだろ!邪魔するな」

クレアの両目が、赤くルビーのように輝いた。

「異世界…」

クレアの言葉に、空牙が反応した。

そんな空牙を、響子は気に掛かったが…今は、そんな場合ではない。

「梓様!」

響子は、空牙から離れると、梓に駆け寄った。


「なんなの…」

梓は、クレアの殺気を浴び、がくがくと震えていた。


「今度は!」

輪廻は、落ちていた小枝を握ると、気を込めた。ネクタイよりは固いので、硬度はさっきより上がっている。

首筋に突き刺そうと、ジャンプした。

「舐めるな!」

クレアも前に出た。

真正面から、輪廻と梓がぶつかる。




「ウグゥ…」

輪廻の胸から、背中まで、クレアの腕が貫いていた。


輪廻の小枝は、突き刺さっていない。


「お前を殺せなくても…お前にやられる私ではないわ」

クレアは腕を抜くと、鼻を鳴らした。


崩れ落ちる輪廻。

その瞬間、空牙は目を疑った。

(な…)



輪廻を見て、梓は両手で顔を覆い、絶叫した。

「いやああああああああああああああああああああ!」


梓のたかが外れた。意識は失ったが、その代わり…心の奥に眠っていた力が、開放された。

梓の心臓辺りから、眩しいばかりの光が、辺りを照らした。
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