天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「当たり前だろ…」

空牙はもう…クレアを見ることはなかった。

ため息だけ、最後につき、

「そんな簡単に…神になれるか…」

空牙は、輪廻のそばに立った。

もう輪廻の胸に開いたはずの穴は、消えていた。

空牙は、輪廻の首筋についた傷と、漂う魔力を確かめていた。

「やはり……」

空牙は、輪廻の体がピクッと動いたのを確認すると、

輪廻から離れた。

そして、力を放ち続ける梓のもとへ向かった。


「女神!」

響子は、何とか力を沈めようとしているが、制御できない。

空牙は、梓の前に屈んだ。

梓の体から漏れる光に照らされながら、空牙は眩しさに目をやられることなく……ゆっくりと人差し指を伸ばし、

「この子の力を封印する」

額に手を当てた。

「なんだと!」

響子は驚いた。

「この子は…力を拒んでいる…。このまま…目覚めても、狂うだけだ。それならば…」

空牙の指が、額に当たると…梓の体から、光は消えていく。

「封印した方がいい…」

空牙は人差し指を離し、立ち上がった。

「いずれ…力は彼女の子孫に受け継がれ…その子に、覚悟と才能があれば…封印は解ける…」

空牙はそう言うと、梓に背を向けた。

「ま、待て!」

その場から消えようとする空牙に、響子が声をかけた。

「梓様に封印をしたのは、いいが…。これからどうする!ファイブスターは、あと三人いるんだぞ!やつらが、襲ってきたら…」


「心配するな…」

空牙は、振り返り、

「今から、殺しに行く。不完全なバンパイアなど、不愉快だ」

そう言う空牙の雰囲気に、響子はぞっとした。

瞳の奥から、殺気が滲み出ていた。

少し後退りしてしまう響子に、空牙は笑うと、

その場から消えた。





「どうなったんだ?」

空牙の消えた空間を見つめていた響子に、傷が癒えた輪廻が平然と立っていた。

「あいつは…どこにいる?」

輪廻は、クレアではなく、空牙を探した。

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