天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
町の中心に来た。

中心は、ターミナルである。

そこだけ異様に、大きく…上下と左右から来る汽車が、交差する時、事故がないように、最新の注意が向けられていた。

馬車や歩行者は、汽車が通り過ぎるまで、待たなければならない為、数分…タイミングが悪ければ、10分くらい待たされた。


リョウとフレアは、タイミングが悪かった。

大人しく、信号が変わるのを待っていると、

二人の間に、一人の女が割り込んできた。

「?」

リョウとフレアの両側があいているのに、無理矢理割り込んできた女は、168くらいあるリョウより、遥かに高かった。

思わず、見上げたリョウの目に、微笑む女が映った。

その何とも言えない…優しい瞳に、リョウは見とれてしまった。

切れ長の目が、リョウを見つめていた。少し肉厚のある唇が、おもむろに動くと、言葉を発した。

リョウは、びくっと身を震わせた。

女は少し、口元を緩め、 

「昔…ロバートジョンソンは、十字路で悪魔に会い…魂と引き替えに、才能を得た…。アコースティックギターから、まったく新しい音を奏で…それが、ロックの素になった」

女は、じっとリョウを見つめ、

「マークボランも、そうだったかしら?」

クスッと笑うと、女は周りを見回した後、

「ここも、クロスロードよ」

リョウに顔を近付け、

「今なら、悪魔と契約できるかもしれないわよ」

「!?」

「だって…あたしは、悪魔だから」

誘うような甘い言葉に、リョウは顔を真っ赤にさせた。

それを見て、女はまた笑った。

すると、後ろから殺気を感じ、女は驚いて、振り返った。


「フレア…」

女は、後ろに立つフレアを見て、目を見開いた。

フレアは、ただ無表情で女を見ていた。

しばらく、二人は見つめ合うと…女は肩をすくめて、

「わかったわ」

と言うと、ちょうど青になった信号を見て、歩きだした。

その後ろ姿を、じっと見送るフレアに、リョウはきいた。

「知り合い?」

フレアは、女が見えなくなるまで、目で追い続けた。

「今は…知らないわ」

少しつっけんどんに、フレアが言った瞬間、また信号は、赤になった。





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