天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
リョウは真っ直ぐ、ケースを握り締め、町を早足で駆け抜けた。

ホワイトシティを抜けると、そこは唖然とする程…何もない。

リョウが歩いてきた道が、町の出口から三本に別れていた。だけど、左右の二本は、すぐに真横にのびている。

真ん中の一本だけが、真っ直ぐに、何もない草原に続いていた。



この草原の向こうで、生き残った人々は、天空の女神の最後を看取った。

その後、人々は逃げるように、島の奥へと避難した。

「左右の道は、他の町に通じてるわ。だけど…この前の道は…」

フレアは、隣に立つリョウを見た。

「人が住む町はないわ」

リョウは数秒、道の向こうを見つめた。視界の先に、小高い丘があり、そこを越えたら、岬が見えるはずだ。

リョウは、静かに頷くと、

「わかってるよ」

丘の向こうを見つめながら、歩きだした。

左右の道には、用がない。

正面だけだ。


フレアは、リョウの後ろを歩きだした。まるで、しんがりを務めるかのように。

そして、たった一度だけフレアは、振り返ったが、すぐに前を向いた。


ホワイトシティの入口のそばに立つ監視塔。

普段なら、警備員がそこから、岬の方や、結界の向こうの海を、監視していたが……今は、警備員がいなかった。

その代わり…1人の女が、立っていた。

見下ろすと、リョウとフレアが丘に向かって、歩いているのが、わかった。

その後ろに、少し距離を取って、歩いていく集団が確認できた。


女は鼻を鳴らすと、リョウ達とその集団の距離を図った。

「人間は…愚かね」

結構、離れている為に、つけられているとは、思わないはずだ。

「まあ…心配はしていないけど」

女は、リョウの後ろを歩くフレアの背中を見た。

「何を、わからす気なのかしらね」

そう言うと、女の体はかげろうのように、揺らめき…監視塔から消えた。




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