天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「これで、俺達だけでも、生き残れるぜ」

リョウの額に当たっている銃口が、震えていた。男は嬉しさから、興奮しているのだ。



「馬鹿じゃないの」

その時、男の耳元で声がした。

「え?」

リョウは、目を疑った。男の顔の横に浮かぶ物体に。

「あんなものだけで、勝てるわけがないだろが」

「何?」

男が振り向こうとした瞬間、銃を持っていた腕があり得ない方向に、曲がった。

「ぎゃああああ!」

男の絶叫とともに、残りの四人が一斉に、リョウの方を見た。

腕が折れた男の喉元に、小枝のようにか細い足が、突き刺さっていた。

小枝…まさに、それくらいしかなかった。


「ま、魔物!」

男が気を失って、崩れ落ちていく間に、四人はリョウとフレアを離し、隠し持っていた銃を抜こうとした。 

「遅い!」

四人が銃を抜く前に、四人の眉間や急所に、蹴りや膝がたたき込まれていた。

「ま、魔物が…」

四人も気を失った。

「魔物じゃないわ」

唖然としているリョウと違って、あまり驚いていないフレアの肩に、五人を倒したものが止まった。 



「ま、まさか…」

リョウは、目を疑った。

「妖精!?」

フレアの小さな顔よりも、少し大きいくらいの人形のような少女。

妖精は、六枚の透明な羽を閉じ、フレアの頭にもたれた。

「あなたを待ってたわ」

妖精は、リョウを真っ直ぐに見据え、

「あたしの名は、ティフィン。人間が、この島に封印された時から…あなたを待っていたわ」

微笑みかけた。

「ねぇ?フレア」

ティフィンは、フレアの顔を覗き込んだ。

フレアは、ティフィンの言葉を無視して、一歩前に出た。

「丘を越えましょう」

フレアの口調が、少し変わったことに、リョウは気付かない。

「う、うん…」

リョウは慌てて、頷いた。

フレアは、気を失っている男達のそばに落ちているドラゴンキラーを拾い上げると、ケースに収めた。

そして、リョウに渡すと、フレアは先に歩きだした。

ケースは受け取ったけど、事態が理解できず、すぐに動けないリョウを残して、

フレアは歩き続ける。




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