天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
カレンは、廊下を歩きながら、ネクタイを緩め、胸元からペンダントを取り出した。

十字架の形をしたペンダントの真ん中に、赤く輝く碑石。

カレンは、十字架を握り締めると、左側の開いている窓ガラスから、飛び降りた。

二階だったが、カレンは階段を一段降りたくらいの感覚で、ひらりと着地した。

そして、学校内で一番目立たない体育館裏を目指した。

学校内での魔法の使用は禁止されていたが、体技が優れているだけだから、文句は言われない。

カレンは忍者のように、人が気にしない死角の場所を選びながら、体育館へと急いだ。


体育館裏へと曲がる前に、カレンはネクタイを締め直すと、

深呼吸をした後、ゆっくりとその姿をさらした。


「山本くんだよね」

そこには、1人の男子生徒がいた。

男子生徒は、カレンを見て、目を輝かした。

「君に呼び出されるなんて、予想外だったよ」

カレンは無表情に、男子生徒に近づいていく。

「君のような…綺麗な子に…。うらやましいって、みんな言うんだよ」

照れながら話す男子生徒に向かって、カレンは言った。

「3年5組…中西拓也だな?」

凄むように、カレンに名前を呼ばれた中西は、

「そうだけど…」

こくりと頷いた。

カレンは、再びネクタイを緩め、

「貴様は…人間じゃないな」

「え?」

男子生徒は、目を丸めた。

「ここまで、完璧に擬態できるとは……並みの魔物ではない」

カレンは、一定の距離を置いて、中西と対峙した。 

「魔神…いや、少なくても、その下くらいか」

カレンは、ペンダントを引っ張り出した。

太陽の光に反射して、クロスのペンダントが輝いた。 



そのペンダントを見た瞬間、中西の顔つきが変わる。

「うっすらと……妖気が漂っているな…。それも、人間じゃない…」

中西はペンダントを凝視し、

「まさか…お前だったとはな…」

中西は、唇の端を緩めた。

そこから、牙が覗かれた。

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