天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
一気にジャングルを駆け抜けていくギラの気を感じて、近くにいた動物達は、逃げ、草木も動きを止めていた。

恐れるものなど何もはずのギラは突然、前方から放たれたプレッシャーに、足を止めた。

思わず、手を突き出してしまったギラは、自らの行動に舌打ちした。

(見えぬ敵に、怯え…姿を見る前に、攻撃するだと!)

ギラは、正々堂々と戦い倒すことが自らのスタンスとしていた。

見えぬ敵に、卑怯な先制攻撃をするなど、ギラのプライドが許せなかった。

ギラは手の平を、自らの胸に当てると、雷撃を放った。



ギラの前に、姿を現したアートは、眉を寄せた。

ギラの胸元が焼け焦げ、煙を上げているからだ。

「フフフフフフ…」

ギラは、手の平を胸から外すと、ゆっくりと顔をアートに向けた。

アートは、距離を取りながら、ギラと対峙した。

ギラはしばらく、アートの顔を見つめた。

そして、にやりと笑った。

「死神……か…」

ギラの笑いにも、アートは表情を変えない。

「貴様だったとはな…」

ギラの脳裏に、過去の映像が甦る。

ギラは、さっと両手をアートに向けた。

それでも、アートは逃げない。両手を下げ、まったく力まない自然体で、ギラの前に立っている。


ギラとアートは、そのままの体勢で、しばらくじっとしていた。


「フン…負けだ」

ギラは鼻を鳴らすと、両手を下ろした。

余裕があるアートと、自分を比較したギラは、負けを認めた。

やり合うまでもない。その前に、自分は気概で負けたのだ。


ギラが負けを認めたのに、アートは何もこたえない。

ギラは、そんなアートをただ見つめ、

「貴様が、再び舞台に上がったことを嬉しく思うぞ」

ギラはそう言うと、

「この戦いは、貴様に預けておく」

ギラは、その場からテレポートした。

アートの前から消える前に、ギラは最後の言葉を残した。

「またな」


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