天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「ギラ…」

ギラが去った後、アートは呟いた。

「アート!」

後ろから、ティフィンが猛スピードで飛んできた。

アートは振り向くと、ティフィンの方へ歩きだした。

「騎士団長はどこだ!」

ティフィンは、アートの目の前の空中で、急ブレーキをかけた。 

「もう帰ったよ」

アートは微笑みながら、歩きだした。

「騎士団長って、誰だ!リンネか!カイオウか!」

ティフィンはキョロキョロと周りを見回し、

「これでも、あたしは!炎の騎士団長不動と戦ったことがあるんだぞ!赤星と一緒にな!」


「赤星?」

ティフィンの言葉に、アートは足を止め、

「赤星浩一君か…」

呟くように、フルネームを言った。

それに気付いたティフィンは、アートの肩に止まった。

「知ってるのか!赤星を」

興奮気味にきくティフィンに、アートは苦笑し、

「直接会ったことはないが…」

そして、目を細め、 

「親友が、彼を高くかっていたからね」


「親友?」

アートの瞳に、初めて哀しげな影を見つめ、ティフィンは顔を近付けた。

「親友って、誰だ?」


「ティフィンは知らないよ。それよりも、彼なんだね?赤星浩一…君が、誰とも契約しない理由は…」 


「え…」

いきなりのアートの言葉に、ティフィンの顔が真っ赤になった。

「そ、そんなんじゃねえよ!別に、あいつなんか!そ、それによ!別に、あたしと契約しなくても…あいつには、女がついてるんだよ!」


「アルテミアか…」

アートは…今度は完全にティフィンに聞こえないように、口を動かした。


ティフィンは焦りながら、

「お、お前だって!あたし達と契約しないじゃないか!」

「俺は、いいんだ…」

妖精や精霊と契約しないと、魔法は使えない。または、魔力を帯びた道具を使うしかない。

「魔法使えなくていいのかよ!」

ティフィンの問いに、アートは答えた。

「できるだけ1人で、戦いたい。君達のような…本当は優しい種族を、巻き込みたくはない」

「アート…」

「大丈夫…心配するな。いざとなったら、使うよ」

アートは、シャツ胸元のポケットに手をあてた。

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