天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「アートさん…ご無事で…」

研究員達が、ジャングルの奥から、姿を現したアートとティフィンを見つけ、安堵の息をついた。

「心配をおかけしました」

頭を下げるアートに、研究員達は慌てた。

「か、顔を上げて下さい。我々こそ、あなたに命を救われたのですから」

研究員達の言葉に、アートは顔を上げると、微笑んだ。

そして、アートは遺跡の中に入らず、先程調べていたところへと足を進めた。

ティフィンは、アートから離れ、ご飯の続きを始めた。




遺跡の側面の石垣を手で触れて、確認しているアートにそばに、研究員の1人がやってきた。

「アートさん…」

アートは振り向き、

「どうしました?ゾルゲさん」

ゾルゲと言われた男は、頭に被っていた帽子を脱ぐと、一度頭を下げてから、アートを見つめた。

アートは、そんなゾルゲの言葉を待った。

ゾルゲは脱いだ帽子を握り締めると、おもむろに話し出した。


「私は昔…防衛軍の研究所ではなく、本部にいたことがあります。その時一度…あなたにお会いしたような気がするのですが…」

「…」

アートは、こたえない。

「もし!あなたが…あの方なら!」

ゾルゲは思わず、前に出た。

「あの方ならば!もう一度、防衛軍を組織し、魔王と戦うことができるのでは、ないのですか!!」

少し興奮気味に話すゾルゲから、アートは視線を地面に落とした。そして、ゆっくりと首を横に振った。

「私は…あなたの思うような人間では、ありませんよ…」

アートは悲しく微笑み、

「それにもし……私に、防衛軍を再結成する力があったとしても…私は、それをする気はありません」


「しかし!世界は今、混沌としています!防衛軍が存在していた時にあった…整然としていた団結がありません!」

ゾルゲの言葉に、アートはまた首を横に振った。

「防衛軍が存在していた時も…人は団結などしてはいなかったですよ…」



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