天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
かなわぬ力とかなわぬ思い
太陽を背にして、地上へと降下していく僕は、信じられない程のプレッシャーを送りつけてくる存在に、気付いた。

明らかに、僕だけに向けられていた。

「赤星!」

耳につけたピアスから、アルテミアの声がした。アルテミアも感じているようだ。

「この気は…」

僕は、炎の翼を転回しながら、気の発する場所を探した。

「お父様……いや、魔王だ!」

思わずお父様と呼んでしまったアルテミアは、恥じるようにすぐに言い直した。


「魔王が…?」

全身の毛が逆立つような感覚に、僕の額に冷や汗が流れた。

(さすが…魔王!こんなプレッシャー…実世界では、感じなかった)

普通なら、魔界にある城から感じるはずが…そのプレッシャーは、魔界と反対側から発せられていた。

僕は気を探り、場所を確定した。


「ロストアイランドか!」


ロストアイランド…。僕が迷い込み、フレアやティフィン、メロメロに出会い…先代の魔王レイと戦った大陸。

実世界のオーストラリアと同じ位置にある。


懐かしさが込み上げてきたが…それどころではない。

魔王といきなり、戦わなければならないかもしれないのだ。


「赤星…」

アルテミアの声もどこか…震えていた。


「心配しないで…」

僕は両手を握り締め、眼下に見えてきたロストアイランドを見下ろした。 

「やるなら…早い方がいい」

そう言うと、体を回転させ、炎の翼で体を包んだ。


「いくよ…」

「気を付けろ!赤星!この感じは…少しいつもの魔王と違うぞ!」

アルテミアの警告を気をしながらも、僕は回転し、落下速度を速めた。

(行けば分かるし…)

魔王と戦う決意も力もある。

僕は迷うことなく、ロストアイランドの上空に突入した。

かつて、魔王レイを幽閉する為に張られていた結界も、今はない。


プレッシャーを感じる場所は、魔王レイの居城だったところだ。

三途の川の川原で積み上げられた石のような城は、僕によって半壊し…原型は留めていない。

僕は懐かしき場所のそばに、降り立った。

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