天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「女神の一撃…」

僕は一瞬だけ痺れたが、すぐに立ち上がった。普段なら、これくらいでダメージなど受けるはずがないが…

胸に刻まれたブラッディクロスから、血だけでなく、力も抜けていっている。

(傷がふさがらない)

だが、そんなことを気にしてる場合ではない。

「赤星!」

アルテミアの激が飛んだ。

(わかっているよ)

僕は頷いた。

戦いは意地の張り合いじゃない。劣勢ならば、その流れを変えなければならない。

僕は、押されている。自分達の武器が、使われているからだ。




バイラは槍を振るった。

最初は、カマイタチが相手を切り刻み、その後に竜巻を纏った雷撃が、襲い掛かる。

天空の女神の…神の一撃である。



僕は、左手を突き出した。

「モード・チェンジ!」

僕の声に重なるように、

「モード・チェンジ!」

アルテミアの叫びが、放たれた女神の一撃にかき消された。

ライトニングソードを突き刺した時とは比べものにならない電流が走ったと思ったら、

湖の水はすべて吹き飛んだ。

荒れ狂う竜巻が、湖底や周囲の地面を抉り、砂嵐を起こし、風が鋭いナイフのように、空中に浮かんだものを切り刻む。




「どうだ?」

そのすべてを確認できる位置まで、羽を広げて静止するバイラは、地表を見下ろした。

そして、視線の端に映った影を見逃さなかった。

鼻を鳴らすし、

「逃げ足だけは速いな」

苦笑した。


「誰が逃げ足が早いって!」

突然影をとらえた反対側の死角から、声がしたと同時に、しなやかな鞭のような蹴りが、バイラの顔面に向かって、襲い掛かってきた。

「甘い」

バイラは持っていた槍状のチェンジ・ザ・ハートで、蹴りを防いだ。

「チッ」

アルテミアは舌打ちすると、バイラから離れ、

「モード・チェンジ!」

フラッシュモードから、エンジェルモードへと切り替えた。

白いドレスと、白い翼が天使を思わす。

「魔王の娘が、天使を気取るか?」

バイラは、槍状のチェンジ・ザ・ハートを回転させた。


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