天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「クッ!」

バランスを崩し、アルテミアから離れる体を、バイラは後ろ足で踏み止まり、一瞬でライトニングソードから、槍へと変えた。

一気に、間合いが長くなり、ライトニングソードよりも細い槍突きだし、バイラは後ろ足で地面を弾くと、前に出た。


普通ならば、アルテミアの体のどこかに突き刺さったはずの…槍だが、アルテミアには刺さらなかった。

まるで、バイラの行動を読んでいたように、アルテミアは槍をドラゴンキラーで防ぐと、そのまま槍にそって、刃を滑らした。

驚愕するバイラの横を、アルテミアが通り過ぎた。

「…刃渡り…」

アルテミアは、バイラの後ろで振り返った。

「どうだ?」

そして、バイラの背中に話しかけた。

「これが、人の思いだ」



「あり得ん…」

バイラの左肩から、鮮血が飛んだ。

崩れ落ちるバイラに向かって、アルテミアは背面跳びのように、ジャンプした。


(借りるぜ!サーシャ!)


バイラの頭上から、アルテミアは斬りかかる。

「グラビティソード!」

普段なら、魔力を使い、重力を刀身に増し、重さを増すのだが、

アルテミアは、今は魔力を使えない。

器用にも、踵落としのように、跳びながら右足を上げ、バイラの頭に刀身が当たる寸前に、踵の先をたたき込んだのだ。


「器用なことよ」

真っ二つに切り裂いたはずの、頭に感触はなかった。

当たる寸前、バイラはテレポートしたのだ。

数メートル程前方に移動したバイラは、ゆっくりと振り向いた。

「認めましょう…。少しは、強くなったと」

こちらに、全身を向けたバイラの頭から、血が流れていた。

少しは、当たったらしい。

アルテミアは、すぐに体勢を立て直した。

対峙する二人。


「魔力をほとんど使わずに…よくここまで…」

バイラは血を拭うことなく、槍から…トンファに変えた。

「だが…まだ甘い…」

バイラは飛び上がると、トンファを天に向けた。


「あの構えは!」

僕の叫びに、アルテミアは舌打ちした。

「あれも…使えるのか」


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