天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
当たり前の勇気
「アルテミア…」

僕の声を無視し、ただ下を見下ろしているアルテミアは、ゆっくりと、地上へと降下していった。

視線の端に、城跡から出てくる五人組の姿をとらえた。

「誰か来る?」

アルテミアも気付いているだろうが、あまり気にはしていないようだ。

バイラが落ちてできた窪みのそばで、アルテミアはただ立ち尽くしていた。



「赤星……」

小さな声を絞りだすような、アルテミアが口を開いた。

「バイラは…もしかしたら…」

アルテミアの言葉を、最後まで聞くことはできなかった。

「失礼します!」

アルテミアの後ろに、整列した五人の迷彩服を着た男女が、敬礼をしながら、話し掛けてきたからだ。


「天空の女神…アルテミア殿とお見受けしますが」

1人の女が、敬礼をしながら、前に出た。

アルテミアは、返事をしない。

女は気にせずに、言葉を続けた。

「私は、元防衛軍新鋭隊所属のジェシカ・ベイカー」


「防衛軍?」

その単語に、アルテミアは反応し、少し顔を向けた。

「は!」

敬礼を崩さないジェシカを、アルテミアは睨むように見つめ、

「元防衛軍なら…どうして、あたしを助けた?お前達が所属していた防衛軍を解体させたのは、あたしなんだぜ」

「わかっております」

即答したジェシカは、アルテミアの右耳についているピアスを見つめ、

「しかし!我々は、あなたの同調者である…赤星浩一殿に、命を救われた者達です」

「赤星に………?」

アルテミアは少し考え込むと、全身をジェシカ達に向けた。

その瞬間、アルテミアは僕に変わった。

目の前に、突然現れた僕に動揺することなく、ジェシカ達は最敬礼をした。

「お久しぶりです!」

ジェシカを見ても、僕は思い出さなかった。

首を傾げる僕に、ジェシカは話し掛けた。

「魔界の城のそばで、あなたに助けられた者達です」 

ジェシカは、迷彩柄のジャケットのポケットから一枚のカードを取り出した。

そのカードを見て、僕は目を見開いた。

「ブラットカード?」

「はい」

ジェシカは頷いた。

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