天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「犠牲者?」

アートはゆっくりと振り返り、男を見た。

生気のない顔は撤回しょう。

そこにある目がぎらつく程、鋭い。

「そうでしょう?」

男は鼻で笑い、

「あなたは強い。しかし、魔王を倒すことはできなかった。唯一、魔王を倒すはずだったティアナは、人を裏切った」

「それは違う!」

アートの怒気が飛ぶ。

男は肌が騒つくような感じを受け、心の中で毒づいた。

(やはり並みではない)


アートを見つめてから、男は頭を下げた。

「挨拶が遅れました。我が名は、ソリッド。我が主から命をうけ、あなたをお迎えに参りました」

「迎え?」

アートは眉を寄せた。呼ばれる理由がわからなかった。

「はい」

アートの不信がっていることに気付きながらも、ソリッドは言葉を続けた。

「我が主、ジェーン・アステカ様が、お呼びです」

頭を下げたまま、アートの返事を待つソリッドに、

「今更だが、断る理由もない」

「では、御同行して頂けますね」

ソリッドは顔を上げ、ゆっくりとアートに近づき、肩に手を伸ばそうとしたが、

アートは拒否した。

「自分でいく」

アートはブラックカードを取り出すと、ソリッドの目の前に指で挟んで示した。

「プロトタイプ…ブラックカード!?」

初めて見るカードに、目を見開いたソリッドはやがて…笑った。

「魔物から魔力を奪うカード。ククク…人らしい」

いやらしく笑うソリッドに、アートは冷静な口調できいた。

「場所を教えろ」

「私を追尾したら、いけるでしょ」

肩をすくめるソリッドに、アートは頷いた。

「わかった」

アートは、軽くソリッドを睨んだ。


「では」

ソリッドがテレポートした後、アートもすぐにテレポートした。




「ようこそ。我らの国へ」

テレポートアウトした場所は、王の間とは、思えぬ程簡素なものだった。

以前攻め入った魔王の城が、玉座以外闇とすれば、ここは玉座以外は薄暗かった。

「ジェーン」

アートは、目の前の玉座に座る女を見つめた。

「お久しぶりですね」

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