天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「アステカ王国?」

その聞き慣れない単語に、僕は訝しげに眉を寄せた。

「は、はい」

女はなぜか、僕を恐れていた。真っすぐに立ってはいるが、背中が小刻みに震えていることに、僕は気付いた。

(これが…赤星浩一)

先程の二人の女神達を一瞬で葬った力を、まじまじと見せ付けられた女は、警戒せざる得なかった。

しかし、命令は絶対である。

女は唾を飲み込むと、一歩僕に近づき、跪いた。

「我が名は、カルマ。あなた様を、我が主ジェーン・アステカの前に、お連れすることが、我が使命です。どうか、我とともに、アステカ王国へ」

カルマは頭を下げ、そのまま僕の返事を待つ。


でも、僕はどうしていいのかわからない。いきなり現れて、まったく聞いたことのない国に、のこのこついていくのもおかしい。

目の前で、跪くカルマの気を探ってみても、魔力は感じない。

(だけど…)

妙なノイズのような違和感があった。人間には違いないと思うが。



「アステカ王国か…」

今まで沈黙を守っていたアルテミアが、僕だけに聞こえるように話しだした。

「超能力の持った人間の集まりと聞いているが…」

「超能力?」

僕の頭に浮かんだイメージをアルテミアは読み取り、

「その力だ」


「超能力…」

実際、この世界に来てから、超能力みたいな力を使ってきたから、今更何が現われても、戸惑わない。

しかし、前に跪く女を超能力者として監察してみると、

(…確かに、今まであった人物とは異質か)

精神波というか…脳波が違うのだ。ノイズの原因は、これだった。

(僕らと違う…いや、普段使わない部分の脳を使っている)

無意識に赤く輝いた瞳が、カルマをスキャンする。


カルマは頭を下げながら、自分が探られていることに気付いた。

できるかぎり心の無にし、必要以上の情報を与えることを防ごうとした。


「アルテミア…」

僕の瞳がもとに戻り、

「僕は、この世界のすべてを知りたい。だから、行ってみるよ」


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