天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「進化?」

魔物が、個々で進化するとは…普通はあり得ない。

確かに、戦い続け、生き残った魔物が、強力になることはあるが…。

蝋燭の火が、マグマになるくらいはあるが、炎が水になることはない。

つまり、属性が変わることはない。

対峙するリンネを、アルテミアが凝視した。

そんなアルテミアに見て、リンネの冷笑は止まらない。


(属性が変わっていない!?いや…属性というか…)

アルテミアは、信じられなかった。

(属性を感じない。そんなあり得ない…。まるで)



「人間だと言いたいのかしら?」

リンネは腕を組み、右肩を上げた。

アルテミアは、目を見開いた。

それは、アルテミアの思ったこと…そのままだった。


「図星ね」

リンネは笑った。

そして、全身に力を込めると、炎が吹き出した。

「属性を変えるとかじゃなくて、力をコントロールすることで、あたしは水の中でも戦えるようになった。そして、力を意識することで、さらにあたしは強くなれた」

リンネの炎のレベルは、アルテミアの予想を超えていた。 

「人間と交わることで、あたしは、女神以上の力を得たわ」


ネーナを上回る炎を身に纏い、圧倒的な迫力で、リンネは襲い来る。


「アルテミア!僕に変われ!」

僕はピアスの中から、叫んだ。炎の属性である僕なら、リンネと渡り合える。


「死ね!天空の女神よ」

リンネの全身からほとばしる炎が、無数の蛇になり、

アルテミアに絡み付こうとする。

「アルテミア!」

僕の絶叫も、リンネの嘲りも、

アルテミアは苦笑した。

「……舐めるな」

アルテミアは、こうを描くように空中で蹴りを放った。

その一蹴りで、炎の蛇は消え去った。

「何!?」

今度は、リンネが驚く番だった。


「自分だけが、人と触れ合って強くなったと思うなよ!」

アルテミアは一瞬で、間合いを詰めると、炎を纏うリンネの鳩尾に拳をたたき込んだ。


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