天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「お前とあたしとでは、守るものの大きさが違う!」

アルテミアの拳が、リンネの背中まで突き抜けた。




「フッ」

リンネは笑った。

そして、アルテミアの耳元で囁いた。

「同じだよ…」

そう言うと、リンネの体が燃え上がり、揺らめくと…消滅した。


「チッ!逃げたか」

アルテミアは、拳を引いた。




「一体…何がしたかったんだ?」

アルテミアは、リンネを貫いた拳を見つめ、

はっとした。

「まさか!」




「命が消えていく」

僕の呟きに、アルテミアの頬に一筋の涙が流れた。


大量の命が消えていく感覚に、アルテミアの拳が震えた。

「あ、足止めか!」

アルテミアは、命の消えていく場所にテレポートした。


僕達は…戦ってはいけなかったのだ。

リンネを無視して、助けにいかなければならなかったのだ。



テレポートアウトしたアルテミアの眼下に、燃える大陸が映っていた。


わずか数分。

数分で、ロストアイランドは燃え上がっていた。

暖炉の中のように、大陸そのものを、燃やし尽くそうとしているかの如く。


絶望に打ち拉がれる僕と、アルテミアの耳に、声が飛び込んできた。


「フフフ…えらそうなこと言って…守れなかったじゃない」


大陸をおおう炎が、さらに燃え盛り…巨大なリンネになる。

「ははは」

アルテミアは、リンネの目玉くらいしかない。

「何も守れなかった!」

リンネは大笑いすると、アルテミアの目の前で、空中に飛び上がっていく。

それは、リンネを形作る数十万の魔物の群れ。

魔物でできたリンネの全身が、目から爪先まで、ロケットのように飛び上がっていくと、

今度は成層圏で360度に拡散し、空を真っ赤な炎が埋め尽くし、夕焼けよりも、赤に染めた。

その後、炎の空はすぐに消えたが、

緑豊かだったロストアイランドの草木は、すべて灰になっていた。


僕とアルテミアは、しばらくただ空に浮かび、

天も地も見れずに、

ただ固まっていた。

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