天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「アハハハ!」

リンネの高笑いだけが、周囲にこだまし…やがて聞こえなくなった。


「…」

アルテミアは唇を噛み締めると、ロストアイランドに向かって急降下した。


「アルテミア!」

焼け野原に、見覚えのある崖が見えた。

確か…その向こうには、エルフの血を引く人々の村があったはずだ。

しかし、家屋はすべて灰になっていた。

翼を折り畳み、赤いジャケットを羽織ったファイアモードになったアルテミアが、まだ熱い大地に降り立った。

バリバリ。

枯れ木を踏んだような感覚に、足元を見たアルテミアは思わず、顔を反らした。

枯れ木ではなかった。

踏んだのは、炭と化した人間だったのだ。

一気に、炎と熱気を吸い込んだ人間が、内臓が燃え尽き…炭と化したのだ。


「ひどい…」

よく見ると、家屋の残骸に混じって、人の形をした黒い物体が、そこらじゅうにある。



「お、お前は…」

そんな惨劇の中…炭の中から声がした。 

炭の山をかき分け、姿を見せたのは、真っ黒に炭のようになり…まだ燃えている老婆だった。 

「アルテミア!」


アルテミアから、僕に変わると、その老婆に走り寄った。

老婆は、赤星の姿を見て、目を見開き、震える手を差し出した。

「あ、赤の王…」

「長老…」

僕は、老婆を抱き起こした。

まるで鉄板を手にしたように、熱い体に僕は言葉を失った。

「一瞬じゃった…結界を張っても…結界が焼けた…」

「……」

「赤の王よ。我々は死なぬ!我々の血を吸え!我々は…お前の中で生き…魔王ライに、復讐をす…」

老婆は最後まで、言葉を発することはできなかった。

赤星の腕の中で、炭になったのだ。

腕の中で、ぼろぼろと崩れ落ちる老婆を、

僕は、どうすることもできなかった。

涙が頬を伝い…悲しみから絶叫しょうとした時、

声がした。

「泣いてはいけません。あなたは、泣いては…」

その声は強い意志を持って、僕に話し掛けていた。

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