天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}

バンパイアであるあたしは、必ず…血を吸わねばならない。

いや、必ずではないが、

血を吸う行為は、他の生物を圧倒し、中々の恍惚感を伴った。

泣き叫ぶもの達をまるで、一杯の水を飲むように命を吸う行為は、癖になる。


「人間なんて、あたし達の家畜!湧き出る家畜!」

二人の御姉様が、人間の町を襲うのを、まるで…バイキングのように、血を吸い続ける姿から、あたしは顔を背けはしなかったが、

真似しょうとは思わなかった。

それは…小さい頃、あたしにお母様が教えていたからだ。

「バンパイアは、人からだけでなく…魔物からも血を吸う…いえ、命のエネルギーを吸い取ることができます」

あたしを見る…切なげなお母様の表情を忘れることはできない。

「あなたにはできるだけ…抑えてほしいの。あなたには、人間の血が半分流れているのだから。だけど…血を吸わないと、バンパイアは力を発揮できない。それに、あなたは…まだ小さい」

あたしの頭を一度撫でると、お母様は自らの指を、少し傷つけ、

血が流れる指をあたしの口に、入れた。

「あたしの血で、我慢してね。あたしの血を吸いなさい」

あたしは、お母様の血を吸うことで、成長したのだ。

だから、あたしは人間を襲っても、血を吸わなくなった。

あたしに血を飲ませ、日に日に痩せていくお母様の顔を知っていたからだ


(あたしの血の半分は、人間のはず)

だから、血を吸わなくてもいけるはずなのに。


魔王の血が濃いのか…人間の血を抑えているのか…血を欲する時が、どうしてもあった。


(人間になればいいのか?)

あたしは、お母様の血を吸いながら、そう思った。

(人間になれば…お母様の血を吸わなくていいのに)

薄ら涙を浮かべるあたしを、お母様はただ優しく頭を撫でてくれた。

(誰よりも強くて…誰よりも優しい…お母様)

あたしは目を閉じた。

(お母様のようになりたい)
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