天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
気が付いた時、あたしは牢屋に鎖で繋がれていた。

「おいたわしや…アルテミア様…」

牢屋の前で、鉄格子の向こうで、ギラが泣いていた。

サラは顔を反らせ、目をつぶっていた。体を震わせながら。

「ギラ…サラ…」

心配してくれる二人の気持ちが、嬉しかった。


「魔王に、襲い掛かったのです。これは、当然の報いです。例え、女神といえども」

二人の横から、バイラがあたしの前に、姿を見せた。

手足、首…全身を繋がれたあたしを見ても、バイラは表情一つ変えずに、

「本来ならば、極刑であることころを…魔王のお慈悲により」

「お母様は、どうなったの!」

あたしは、バイラの言葉を遮った。

「今のあなたに、知る権利はない」

バイラは冷静に、述べた。 

「答えろ!」

あたしの目が赤く光り、バイラを射ぬく。

普通ならば、これで意識を乗っ取れるはずだが、 

バイラには効かなかった。

「彼女は、我々に抵抗する防衛軍の最高責任者である安定者の1人!普通ならば、すぐに殺されてもいい立場にいた!しかし、それを免れていたのは、あなたを産んだからです!」


「お母様は!」

あたしは、全身に力を込めて、鎖を切ろうとした。

しかし、切れない。

「無駄です。今のあなたは、しばらく血を吸っておられない。力がでるはずがない」

「ウオオオ!」

気合いを入れても、あたしは鎖を切れなかった。


「なんと無様なことですか!魔王の娘であり、バンパイア!天空の女神である…あなたが、血を吸わないなんて…」

顔をしかめ、嘆くバイラに、あたしは言った。

「あたしは、お母様といっしょだ!」

「何を戯言を!あなたはいずれ、翼あるすべての魔物を率い、人間を滅ぼすお方!ティアナと同じではありません!」

「魔神のくせに、お母様を呼び捨てにするな!」

あたしの剣幕に、バイラはため息をつくと、

あたしに背を向けた。

「しばらく、ここで頭を冷やされることです」



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