天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
牢屋から離れようとするバイラは、まだあたしの前にいるサラとギラに言った。

「帰るぞ」



「ああ…」

ギラは、ちらっとあたしを見た。

鎖を引き契ろうと、力を込めたあたしが汗だくになっていることに気づいた。

「アルテミア様…」

鉄格子を破壊し、あたしのそばにいこうとするギラを、バイラが一喝した。

「魔王に逆らうか!」

その言葉に、ギラの動きが止まった。

「いずれ、血を吸わなければ…禁断症状が出る!その時、必ず…アルテミア様は、魔王に許しをこう!」

バイラの言葉に、ギラは仕方なく…牢屋の前から歩きだした。

サラも続く。

三人が、牢屋の前からいなくなろうとした時。



「あたしを舐めるな」

去りゆく騎士団長達の背中を睨み、

「あたしは、お母様の娘!決して、許しなどこうか!」


あたしの言葉に、ギラは泣き、サラは肩を震わしたが、
バイラだけは無表情で、その場を後にした。





1人、牢屋に残されたあたしは、首をがくっと落とした。

鎖を切ろうと、残りの魔力を使った為、あたしは全魔力を失った。

「あたしは…」

その瞬間、あたしは禁断症状に襲われた。

血が吸いたくって、血が吸いたくって、仕方がない。

目に血管が浮かび、あたしの頭が…獲物になりそうな魔物や人間を探す。

(いや!)

あたしは、自分の無意識の思考を、止めた。

(あたしは…お母様の娘!)

頭で抵抗しても、体が本能が血を求めていた。

(あたしは、負けない)


だけど、全身に血管が走り、

血を欲する本能は、止めれなくなる。

(あたしは…)

瞳から涙が流れたが、

鋭い牙が生えてきて、あたしは絶叫した。

「オオオ――!」

嗚咽のような咆哮を上げた時、

何かが飛んできて、鉄格子を切り裂いた。

その飛んできた二つは、あたしを繋ぐ鎖をも切り裂いた。

そして、あたしはその物体を掴んだ時、心の中でこう叫んだ。

(モード・チェンジ!)

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