天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
男の言葉に、九鬼は絶句した。

「あなたは、闇を刈る存在」

男は、じっと九鬼を見つめ、

「だからこそ…我が主は、あなたを呼びました。この世界に」

刺すような鋭い視線に、逆に九鬼の体は落ち着いた。

そんな九鬼に心の中で、男は感心していたが、そんな様子は微塵も見せずに、

「昔呼んだ者は、赤ん坊だったこともあり、この世界の人間に育てられ…最高の戦士になりながらも、人間ではなくなって、死にました」

「それが…」

九鬼の眉がはね上がった。

「魔獣因子です」

男は頷いた。

九鬼は、じっと男を見ている。

男は鼻の頭をかくと、

「赤ん坊でしたし…この世界の月は、魔獣因子なんてものがあるとは知らなかったですし」

「その話はいい」

九鬼は話を遮ったが、男は話を続けた。

「月はすべてを照らし、すべてを見ていますが、聞くことはできません」

再び頭を下げ、

「しかし、向こうの月も、申しておりました」

すぐに上げると、真剣な表情を作ってみせ、

「赤星綾子を殺したのは、天空の女神アルテミアでございます」


「アルテミア…」

その言葉を聞くだけで、九鬼の体は怒りで震えた。

「月は、懸念しております。アルテミアは、今は!人間の味方をしておりますが、あの魔王の血筋!いつ魔の本性が目覚めるか、わかりません!そして!」

男は、言葉を切り、

「赤星浩一もまた!魔獣因子が目覚め、人間ではなくなりました」

ゆっくりと片膝を地面につけると、

「月は、人間を守りたく思っております。純粋な人間の力で!だからこそ、あなた様をこの世界に導いたのです!人類を救う…救世主として!」


そう…九鬼は、赤星と同じ世界の人間だったが、ブルーワールドに呼ばれたのだ。

そして、九鬼は月の依頼に応じた。

有人赤星綾子の仇を討つ為に。


「人類を救うこと!それが、我が主…月の女神の願いでございます」

男は、月に手を差し伸べた。


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