天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「キイイイ!」

甲高い声を発しながら、ゴキブリに手足が生えたような魔物が、頭上から九鬼を狙う。

「チッ!」

九鬼はブリッジでもするかのように、背中を曲げて、両手を地面に付けると、足を曲げ、全身を使って、バネのように跳ね上げた。

飛来してきたゴキブリの魔物の腹に、蹴りが決まった。

「ルナティックキック二式」

低空から、相手の顎先を蹴り上げるのが、通常の二式である。

九鬼はゴキブリの魔物を撃墜した後、そのまま地面に足から着地すると、回転し、風力を増した。

体を包む月の光が、九鬼の周りにできた空気の渦に逆らわずに、流れ出した。

「フン!」

九鬼はジャンプすると、身をよじりながら、右足を突きだした。

爪先を支点にして、光渦が回転する九鬼を包んだ。

まるで、ドリルのようになった九鬼の蹴りが、魔物達に突き刺さり…そのまま突き抜けると、さらに後ろにいる魔物も貫いた。

「ルナティックキック三式!」

二匹の魔物に、風穴を開け、地面に着地した九鬼。




「ぎゃああ!」

一匹づつでは不利と感じたのか…魔物達が一斉に襲いかかってきた。

「トゥ!」

魔物達が囲んだ時、九鬼はジャンプした。


月に向かって。


「ヒュー」

いつのまにか…九鬼の肩に乗るタキシードの男が、口笛を吹いた。

一瞬で、公園全体を見下ろせる上空までジャンプした九鬼は半転し、右足を月に向けた。

月の光を浴びて、右足が輝き出す。

「ルナティックキック四式!」

そして、また半転すると、右足を真下に向け、

「別名!」

そのまま急降下で、落下した。

「月影キック!」


それは、テレビでおいても、九鬼こと乙女ブラックの必殺技だった。

瞬きの速さで、落下した九鬼の蹴りは、一ヶ所に集まっていた魔物の頭上に炸裂し、

公園に巨大なクレーターを作り出した。

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