天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「やったあ!」

茂みのそばで隠れていた女の子が、歓喜の声で上げた。

クレーターの中央でしゃがんでいた九鬼は、その声の方に微笑んだ。

そして、ジャンプすると、クレーターから飛び出した。

(凄い…)

九鬼は声に出さずに、魔物達を吹き飛ばした月影キックの威力に心の中で、驚いていた。

予想外である。



「これが…月の力でございます」

また肩の上に現れたタキシードの男が、少し得意げに言った。

「フン」

九鬼は鼻を鳴らすと、ゆっくりと歩き出した。

クレーターの近くに、蜂の顔をした魔物が倒れていた。

「生きてるな」

九鬼は、小刻みに蜂の魔物の体が震えていることを確認した。

本当は、こいつだけ外したつもりだったが、

予想外の威力により、蜂の魔物の両足が吹き飛んでいた。

「き、貴様は…一体」

震えてながら、何とか上半身を起こした蜂の魔物の胸に、九鬼は足を当てると、また地面に押し付けた。


「質問に答えろ!」

九鬼は、こいつだけが人間の言葉を話せることに気付いていた。だからこそ、この魔物だけ残していたのだ。

九鬼は、踏みつける足に力を込めて、

「天空の女神は、どこにいる?」

魔物を見下ろしながら、きいた。

「て、天空のめ、女神だ、だとお」

九鬼の迫力に怯えながらも、魔物は笑った。

「さ、さあな…」

嘲るように言った瞬間、九鬼の足が光輝き、魔物の胸を焼いた。

「ぎゃあああ!」

ムーンエナジーが、魔物の体を焼いているのだ。

「し、質問に答えろ!」

「わ、わ、わかった」

苦しみながら、魔物が頷くと、足の輝きは消えた。

「て、天空の女神は…」



その時、遠くの方からサイレンが近づいてくるのがわかった。

「警察が来たよ!」

茂みの向こう…囲いの隙間から、警察車両ではなく…明らかに軍事車両と思われる装甲車が二台、公園の前で止まるのが見えた。

「対応が早いことで」

タキシードの男が、皮肉を言った。

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