天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
上空から、電光石火の速さで垂直に落下する九鬼。

月をバックにして、自らの真上から、蹴りの体勢で落ちてくる九鬼を、サラは見上げもせず、その場から避けることもしない。


「貴様の名前は?」

サラは口元を緩めながら、左腕を上げた。

光の槍を化した九鬼の蹴りは、サラに当たったはずだった。

「!?」

九鬼はすぐに、返事できなかった。

炸裂したはずの渾身の月影キックが、止められていたのだ。

それも、サラの小指一本で。


小指から発生した…微弱な電気が盾となり、ムーンエナジーを弾き返していた。


「もう一度…きこう!名は?」

月の力で、威力が増した蹴りが、通じない。

まったくダメージを与えられなかった…という現実を目の当たりにして、

九鬼はフッと笑ってみせ…

そして、答えた。


「あたしの名は、九鬼真弓」


「そうか…」

九鬼の名を聞いたサラもまた、フッと笑い、

「もし…生き延びて、再び会うことがあれば…その名を記憶しょうぞ!」

サラの小指が、光った。

「九鬼真弓!」



「ええ…わかったわ」

九鬼が頷いたとほぼ同時に、サラから放たれた電撃が九鬼を包んだ。



月まで届くかもしれない…そんな幻想を浮かべさせる電気の束は、まるで灯台の光のように、夜空を照らした。

そして、上空に浮かぶ月に、向かって伸びていった。


その時…一瞬だが、月に影が走ったことは、誰も気づかなかった。サラ以外は。

数秒後、

サラの小指の上には、九鬼はいなかった。

一瞬で消えたのか。

それとも。


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