天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「なぜ!助けた!」

月に背を向けて立つ男に、人の大きさに戻ったタキシードの男が叫んだ。

その身を震わせながら、

「それは、こちらの言葉だ?なぜ…この子に力を与えた?」

タキシードの男の前に立つのは、ジャスティン・ゲイだった。

ジャスティンは、サラの電撃が放たれる瞬間、digになり、闇と同化しながら、九鬼を救出したのだ。

「そ、それは…人に、力を貸すために…」

少し口ごもるタキシードの男の顔をじっと見つめた後、ジャスティンは視線を外し、月を見上げた。

「式神であるお前に問いた私が、悪い」


「く!」

タキシードの男は、顔をしかめた。


「それにしても…」

ジャスティンは、足下に横たわる九鬼を見下ろした。

ぼろぼろになった戦闘服。

(この子は、何者なのだ?)

サラの電撃が放たれると同時に、九鬼はムーンエナジーで足元にバリアを作ると、電撃の勢いを利用して、後方に逃げようとしていた。

結果的には、九鬼の作り出したバリアは破壊され、

ジャスティンによって直撃は免れたが、その行動は意味のないものになってしまった。

だが、一秒もしない時の中で、それだけの行動を瞬時に行える人間が、他にいるだろうか。

ジャスティンは、九鬼の持つ底知れぬ実力に、感心していた。

(だと…すれば…)

ジャスティンは、視線をタキシードの男に再び向けると、

(危険かもしれないが…今は、このままがいいのかもしれないな)

不敵な笑みを浮かべた。


「なな…何が言いたいのですかな?」

タキシードの男は体裁を装う。

「この子は、任せるよ。月の女神…いや、死の女神デスペラードよ」

ジャスティンの言葉に、タキシードの男が目を見開いた。

「な、なぜその名を…」

歯軋りをするタキシードの男に、ジャスティンは月を再び見上げた後、

「人間をなめるな!」

睨み付けた。

「く」

それだけで、タキシードの男は少し後ずさった。


ジャスティンは、その様子を見つめた後、

その場からテレポートした。

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