天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「どけ!」

アルテミアはライトニングソードの切っ先を、地面と平行にした。

「例え…お母様の知り合いとはいえ!どかないなら、その女ごと斬る!」

アルテミアの言葉に、ジャスティンは笑った。

「何がおかしい!」

「お母様か…」

ジャスティンは、アルテミアの手にあるライトニングソードに視線を移し、

「先輩ならば…そんな単純な手段を選ばない!ただ相手を殺すだけなんてな!」

ジャスティンは視線をアルテミアに戻し、

「例え無理だとしても、他を助ける為に考え、苦しみ、努力する!先輩ならば!」

ジャスティンは手を伸ばし、ライトニングソードの刃を握り締めた。

「殺さない!」

力を込めた手から、床に血が流れ落ちた。

「え!」

アルテミアの表情が変わる。張りつめていた顔が、緩んだ。

その瞬間、ライトニングソードは消え、二つの回転する物体に戻った。

「アルテミア…何とかなる!いや、何とかする」

ジャスティンは、優しくアルテミアに頷いた。


「ジャスティン…」

アルテミアの体から、力が抜けていく。

「心配するな」

ジャスティンは、傷を癒すことなく、手を握り締めた。




「ジャスティン?」

後ろからか細い声がして、ジャスティンは振り返った。

床に崩れ落ちていたジェーンが、顔を上げていた。


「ジェーン…」

ジャスティンの口から、その名を聞いた瞬間、ジェーンの瞳からまた涙が流れた。

「あたしは、ジェーンなの?あたしをジェーンだとわかるの?」

ジャスティンは静かに、頷いた。

「あたしを、ジェーンだと理解してくれるの?」


ジャスティンは頷いた。

ジェーンの涙は止まらない。

「あたしを…これからも、ジェーンとして、扱ってくれるの?」

ジャスティンの動きが止まった。

「ジャスティン?」

ジェーンは大きく、目を見開き、

「ジャスティン!」

「…」

ジャスティンは一度深呼吸をすると、首を横に振った。

「ジャスティン!」

その悲痛な叫びにも、ジャスティンは再び…首を縦に振ることはなかった。

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