天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「近づいているな…」

ぐったりと、意識を失った明菜を、傍らに寝かせて、

バイラは、大陸の遥か向こうで、繰り広げられている戦いの気を、感じていた。

「女神の片割れがくると」

ギラは、実世界でいう日本海の方を、見た。

かつて、38度線にあった結界。

今はもうなく、新たな結界は、遥か後方に張られていた。

バイラ達は、38度線から北に川を渡った、山の頂上に、陣をはっていた。

「折角、もとの場所をあけているのにな」

ギラは、人の臆病さを笑った。

「まあ…我らが近くにいるのだから…仕方あるまい」

山の麓から、山頂まで、立ち並ぶ天空の騎士団の、旗印が、風に靡いていた。

「フン」

バイラは、鼻で笑った。

ギラは、その仕草の理由が分からず、少しバイラを見た。

バイラは、無表情で、明菜を見ていた。

明菜の左手についた、指輪を。

ギラは、視線を外し、山頂の一番端で、1人佇むサラの背中を見た。

「サラ…」

サラは、日本海とは違う場所を、軽く睨んでいた。

「信じられん…」

サラの呟きに気づき、ギラは、サラに近寄った。

「どうした?」

ギラは、サラの顔を覗き込んだ。

サラは、嬉しそうに笑っていた。
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